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医者にかかり方

医者にかかりかた

 一見、どんなに軽い症状であっても、医者は、あらゆる可能性を考え、もっとも的確な診断にたどりつくために、問診・診察・要すれば検査を行います。このさい、時間的・経済的無駄を省くためにも経験を活用します。医学部を卒業したての若いドクターは、珍しい病気から思いつく傾向がありますが、経験をつむと、しだいに頻度の多い疾患から順番に考えるようになります。頻度の多い病気のバリエーションも診療経験が深まるほどに増えるため、不要な検査に走る傾向が減り、国家の医療経済の節約にも貢献します(苦笑)。
設備の整った大きな病院の先生は、重い病状や、診断が難しい疾患の患者さんに対応すべく訓練を受けています。つまり、専門的治療を行うべく日々奮闘しておられるわけです。最近、医療崩壊が叫ばれていますが、その原因の1つに、大病院志向が言われております。大病院の先生方は、つまり勤務医でありますが、前述のように本来は専門的・重症患者さんの診療を行うことを期待されているわけです。安定期の患者さんや、風邪の初期などの患者さんが、大病院の外来に沢山殺到していますと、まず、具合の悪い患者さんがますます具合が悪くなってしまう心配と、大病院の外来の先生が、せっかくの専門医の能力を使うべき、病棟患者さんにかける時間と体力を削られてしまいます。安定している人や、お風邪の方などは、近くの開業医にかかるほうがいいんだけどなあと手前味噌ながら思ってしまいます。

視野の広さと集中力はまったく違います。軽い症状でも、背後に隠れているさまざまな専門に波及する病態を察するのは、専門医よりもむしろ経験豊富な開業医のほうが向いているのではないでしょうか。そして、必要あらば、的確な専門医のところに紹介する。どの専門医にかかるべきかも判断できない状態で、最初から専門医集団の大病院に行けば安心だと思うのでしょうが、本当にそうでしょうか。専門医というのは、しかるべき環境が整ったところで、専門にハマった患者さんが来ないと本来の力を発揮できません。専門医が、自分の専門でない分野の患者さんの診たてを、町の開業医よりも的確に出来るかどうかは不明です。少なくとも、専門医の有効な活用方法とは言えないと思います。